『Mの制服に恋をして ―僕がファストフード店で知った、大人たちの秘密―』

いつも見て頂きありがとうございます。

今回紹介するのは、自分自身で出版したものなので、あらすじと2章まで掲載させていただきます。

気になった方はリンク貼っておきますのでそちらからお願い致します。

男子校育ちの大学生がリハビリのために始めたバイト先「M」。そこで出会った36歳の人妻・Sさんとの、息が詰まるほど切なく背徳的な愛の記録。19歳のウブな情熱と言葉の愛撫に狂い始める人妻。司法試験という現実を前に、泥沼の深淵へと引きずり込まれていく若者の葛藤を描いた、生々しくも美しい青春私小説・第1部。

第1章:男子校育ちの大学生、Mの門を叩く

あれは一体、何年前のことだったろうか。
大学に入学したばかりの俺は、それまでの抑圧から解放されたような妙な高揚感の中にいた。何か新しいことを始めたい――そんな軽い気持ちから、俺はアルバイトを探すことにした。  中学、高校と、むさくるしい男子校という環境でまるまる6年間を過ごしてきたツケは、自分が思っている以上に大きかった。気がつけば、同世代の女子とまともに視線を合わせることすらできなくなっている自分に気づき、愕然としたのだ。  このままでは、まともな大学生活すら送れないかもしれない。強い危機感を抱いた俺が、荒療治のリハビリの場として選んだのが、街のファストフード店「M」だった。
時給はお世辞にも高いとは言えなかったが、そこには期待通り、たくさんの女の子たちが働いていた。  大半は同世代の学生だったが、時には元OLや主婦層も交じっており、女性という未知の生き物に慣れるには、これ以上ない格好の環境に思えた。
しかし、進学校を出て、世間一般で一応名の通った大学に通っていた俺は、バイト先の小社会ではお堅い人間と見なされ、あまり相手にされなかった。  職場には「バイト命」と言わんばかりの遊び人の男たちが何人もいて、彼らは要領よく女の子たちと浮名を流していた。一方、真面目に大学の授業に出席し、放課後は剣道部で稽古に励む俺は、どちらかと言えば完全に浮いた存在だった。
そもそも、女性への接し方が根本から分かっていなかった。今にして思えば、当時の俺の立ち回りは実に下手くそだった。  女の子の側から、それとなく好意混じりのモーションをかけられていたことも、実は何度かあったのだ。しかし当時の俺は、そのサインを微塵も敏感に察することができなかった。 「なぜ彼女は、俺にこんな思わせぶりなことを言うのだろう?」  ただただ、その言葉の意図を測りかねて訝しむのが関の山だった。
バイト命の連中の多くは、やがて大学を中退したり卒業したりして、そのまま「M」の社員へと就職していった。だが、俺にはそんな未来を選ぶ気は毛頭なかった。  日中は真面目に大学の授業に出て、放課後は剣道部で汗を流し、空いた時間にバイトに入る。そんなストイックな毎日が、ただ淡々と過ぎていった。
変化が訪れたのは、バイトを始めて2年目を迎える頃だった。  それなりに仕事を覚えた俺は、新人の教育を任される「トレーナー」という役職に就くことになったのだ。それに伴い、勤務時間外に他のスタッフと業務の打ち合わせをする機会も増えていった。俺は相変わらず、お堅い堅物としての態度を崩さずに指導に当たっていた。
その職場で働く主婦たちは、一応30代前半までの女性が中心だった。  接客業という性質上、やはり見た目や雰囲気が若い人材が好まれる傾向にあったのだろう。面接に来ても年齢を理由に断られている40代の主婦を、俺は陰で何人も見かけていた。  決してバイト熱心な優等生ではなかった俺だが、なぜかこの主婦たちには、比較的受けが良かった。 「あんたみたいな真っ直ぐな若者が、将来、女を幸福にするんだよ」  中には、そんな風にからかい半分で熱っぽく声をかけてくれる人もいた。
そんな主婦たちのうち、俺は特に3人の女性と深く関わっていくことになる。  トレーナーという立場上、彼女たちと業務の打ち合わせを重ねる機会が多かったから、というのが表向きの理由だ。  しかし本音を言えば、俺は同世代の若い女の子たちが好むような、流行りの軽い会話についていくことがどうしてもできなかったのだ。仕事の話であればじっくりと理路整然と話せるものの、気の利いた冗談を言ったり、場を盛り上げたりするのは大の苦手だった。若い女性との間には、どうしても越えられない見えない壁のようなものを感じていた。
その点、主婦たちは俺にとって「恋愛対象の女性」というより、年の離れた「頼れる姉さん」のような、絶対的な安心感のある存在だった。
誰もいない事務室での打ち合わせ中、他愛のない世間話をしているうちに、時には大人のエロっぽい話題に発展することもあった。  そんな時、男子校育ちの純粋な童貞である俺は、決まってどうしていいか分からずにどぎまぎしてしまった。真っ赤な顔をして視線をそらし、完全に黙り込んでしまうのだ。
そんな俺の初心(うぶ)な反応を見て、主婦たちは楽しそうに、声を合わせてどっと笑うのだった。――その中の一人が、あのSさんだった。

 

第2章:カウンターの向こうのSさん ――生活感のない主婦

その3人の主婦のうち、一際強い印象を俺の記憶に残しているのが、当時36歳だったSさんだ。  彼女は21歳という若さで結婚し、すでに双子の母親だった。聞けば、ご主人は誰もが知る大手商社に勤めており、ルックスも良く、かなりモテる人らしい。
Sさんは、まるでそのご主人から略奪されるような形で、激しい恋愛の末に結婚し、あれよあれよという間に妊娠と出産を経験したのだという。  双子の育児というのは想像を絶する壮絶さだったはずだ。彼女はそれこそ必死で子供たちを育て上げ、手がかからなくなったことで、ようやくこうして外で仕事ができるようになったのだと、少し晴れやかな顔で語ってくれた。
それほど優秀でモテるご主人が、周囲の目を引くようにして略奪結婚しただけのことはある。Sさんは同性から見ても異性から見ても、信じられないほど魅力的な女性だった。  小柄で全体的に華奢な体型をしているにもかかわらず、胸元だけは驚くほどの迫力があった。Mの支給品の制服を、内側から柔らかく、しかしはっきりと押し上げるように盛り上げている。そのアンバランスさが、余計に男の目を惹きつけた。  丸顔で整った愛らしい顔立ちをしており、驚いたことに、このファストフード店において彼女目当ての「常連客」まで存在していた。
回転率が命のファストフード店で、特定のスタッフに固定客がつくなど滅多にないことだ。その熱心な男性客は、お店がどんなに混雑していても必ず彼女のレジの列に並び、ある時、意を決したように一通の手紙を渡してきたという。  しかし、その後彼女が既婚者で子供もいる主婦だと知ってがっかりしたのだろうか。やがてその客は、ぱったりとお店に姿を見せなくなった。  それほどまでに彼女は、独身だと言われても誰も疑わないような、生活感を微塵も感じさせない若々しさと瑞々しさを保っていた。
厨房の狭い通路で彼女とすれ違うとき、なぜか彼女は俺から視線をフッと外しながら、身体が触れ合いそうになるほど近くを通ることが度々あった。  だが、実に惜しいことに、当時の俺はそのたびに「あ、すみません」とばかりに身を縮めて避けてしまっていた。男子校育ちの悲しき性(さが)で、女性が近づいてくる恐怖心に勝てなかったのだ。
そんなある日、決定的瞬間が訪れた。  すれ違う刹那、彼女の手の甲が、俺の股間に明確に当たったのだ。
衣服越しに伝わる突然の感触に、俺は心臓が跳ね上がるほど慌てて彼女の顔を見た。しかし、Sさんは何事もなかったかのように、黙ったままスッと歩み去っていった。
ピークタイムの忙しい厨房は、戦場さながらの混沌とした世界だ。だからその時は「ただの偶然だろう」と自分に言い聞かせて無理やり納得させた。だが、あの瞬間に肌を伝った掠めるような手の感触だけは、何年経った今でも、脳裏に鮮烈に焼き付いて離れない。

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