いつも見て頂きありがとうございます。
今回紹介するのは、自分自身で出版したものなので、あらすじと2章まで掲載させていただきます。
気になった方はリンク貼っておきますのでそちらからお願い致します。
――彼女を、他の男に奪われた。
大学時代、ファミレスのバイト先で出会った彩。
小柄で童顔なのに、どこか目を離せない不思議な魅力を持つ彼女に、俺は少しずつ惹かれていった。
やがて恋人になり、将来を信じていた二人。
しかし、彩の海外研修をきっかけに、その関係は静かに崩れ始める。
嫉妬。
裏切り。
執着。
そして、消えない欲望。
彩を失う恐怖に壊れていく俺。
他の男へ惹かれながらも、最後には俺の元へ戻ってくる彩。
何度も別れ、傷つけ合い、それでも離れられなかった二人が辿り着いた結末とは――。
これは、「許せない」のに「愛してしまった」男の物語。
NTR、遠距離恋愛、裏切り、再会、そして結婚。
痛みと依存の先にある、“それでも一緒に生きる”という選択を描いた恋愛小説。
第一章 出会い
俺が大学三年生になった春、彩は短大の新一年生としてバイトに入ってきた。
ファミリーレストランの厨房で初めて彼女を見たとき、正直、それほど印象には残らなかった。
童顔で小柄。笑うと目が細くなる、どこにでもいそうな可愛い子。
けれど、制服姿でホールに立つ彼女を見た瞬間、店の空気が少し変わった気がした。
「新しく入った子、結構可愛くない?」
先輩たちのひそひそ声が耳に入る。
彩は愛想が良かった。男性客に話しかけられても嫌な顔をせず、自然な笑顔で返す。その距離感の近さに、常連客たちがどこか嬉しそうにしているのが分かった。
最初は気にも留めなかったのに、気づけば俺も彼女を目で追っていた。
ミスをしても、彩は落ち込まない。
「ごめんなさい! すぐ直します!」
そう言って頭を下げたあと、すぐに笑顔に戻る。
その明るさが、忙しい店の空気を和らげていた。
初めて二人きりでシフトが重なった夜、閉店後の片付けをしながら彩が聞いてきた。
「先輩、大学って楽しいですか?」
「まあな。サークルとかバイトとか、適当にやってるよ」
「いいなぁ。私、短大だからちゃんと就職しないとって感じで」
そう言って笑ったあと、彩は少しだけ遠くを見るような目をした。
その表情が妙に大人っぽく見えて、俺は言葉に詰まった。
それから数週間後。
閉店後、駅までの道を並んで歩いていると、彩が小さな声で言った。
「今日、遅くまでありがとうございました」
街灯の光に照らされた横顔は、どこか照れているように見えた。
「疲れてないか?」
「大丈夫です。でも……先輩のアパート、この近くなんですよね?」
俺は思わず足を止めた。
「なんで知ってるんだ?」
「えへへ。内緒です」
悪戯っぽく笑う彩に、心臓が妙に高鳴った。
その夜、俺たちは少しだけ遠回りをして、俺のアパートへ向かった。
最初は本当に、お茶を飲むだけのつもりだった。
ソファに並んで座り、他愛もない話をしているうちに、ふいに彩が俺の肩へ寄りかかってきた。
「……先輩のこと、好きになっちゃったかも」
柔らかな声だった。
次の瞬間、唇が触れた。
その小さなぬくもりだけで、俺の理性は簡単に揺らいでしまった。
彩は素直だった。
嬉しいときは笑い、寂しいときはすぐ顔に出る。
抱きしめると安心したように目を閉じ、俺の名前を呼ぶ。
そんな時間が、少しずつ当たり前になっていった。
バイト終わりに会う。
休みの日に一緒に出かける。
夜中まで電話を繋いだまま眠る。
気づけば俺は、彩がいる毎日に慣れきっていた。
スマホに通知が来るたび期待して、バイト先で彼女の姿を探してしまう。
たぶん、その頃にはもう、本気で好きだったんだと思う。
彩が短大二年生になり、就職活動を始めても、俺たちの関係は変わらなかった。
そして六月。
彩は大手企業から内定をもらった。
「おめでとう、彩」
「ありがとう。でも、これから忙しくなりそうだなぁ」
乾杯したグラスの向こうで、彩は少しだけ寂しそうに笑った。
その笑顔に、ほんの小さな違和感を覚えた。
けれど、そのときの俺は気づいていなかった。
この幸せが、ずっと続くものだと信じていたからだ。
――まだ、何も始まっていなかった。
第二章 海外研修
彩が内定した企業の内定者研修で、海外へ行くことになったのは八月のことだった。
「軽井沢旅行と日程、重なっちゃったんだけど……どうしよう」
電話越しの彩は、どこか申し訳なさそうだった。
俺は一瞬だけ言葉に詰まり、それでも平静を装った。
「大事な研修なんだろ? 俺に気を遣わなくていいから、ちゃんと行ってこいよ」
本当は違った。
行かないでほしかった。
せっかく前から計画していた旅行だったし、何より、一週間も彩と離れることに強い不安があった。
でも、そんな情けない本音を口にすることはできなかった。
「……ありがとう。帰ったら埋め合わせするね」
彩は少し嬉しそうに笑った。
結局、彼女は研修へ参加することになった。
後日、何気なく聞かされた参加人数に、俺の胸はざわついた。
女性五人に対して、男性二十人。
たったそれだけの情報なのに、胸の奥へ小さな棘が刺さったような感覚が残った。
出発前日。
彩は大きなキャリーバッグを持って、俺のアパートへ来た。
「忘れ物ないかなぁ」
床に荷物を広げながら、彩が笑う。
その姿を見ているだけで、俺は妙に落ち着かなかった。
その夜、俺たちは何度も身体を重ねた。
離れる一週間分を埋めるみたいに、何度も。
彩はいつもより甘えるように抱きついてきて、俺の名前を何度も呼んだ。
「帰ったら、またいっぱいしようね」
そう言って笑う彼女を抱きしめながら、俺はどうしようもなく不安だった。
空港へ向かう朝。
「ビトンの財布、買ってくるね」
彩は無邪気に笑って手を振った。
俺も笑顔を作って見送ったが、胸の奥のざわつきは消えなかった。
帰宅してから、俺は何度も研修の日程表を見返した。
Sビーチ自由行動。
ディズニーワールド自由行動。
その文字を見るたび、嫌な想像が頭をよぎる。
彩と一緒に水着を買いに行った日のことを思い出した。
俺は露出の少ないワンピースを勧めた。
けれど、店員に「絶対こっちの方が似合いますよ」と言われ、彩が選んだのは青と白のストライプ柄のビキニだった。
試着室のカーテンが開いた瞬間、俺は言葉を失った。
華奢な身体に似合わないほど豊かな胸。
深い谷間。
白い肌。
本人は照れながら笑っていたが、その姿はあまりにも男の視線を惹きつけるものだった。
あの水着姿を、二十人の男たちが見る。
そう考えるだけで、胃の奥が重くなった。
ビーチではしゃぐ彩。
無邪気に笑う彼女を囲む男たち。
夜、ホテルの部屋で酒を飲みながら距離を縮めていく光景。
そんな妄想が、頭から離れなかった。
自分でも馬鹿らしいと思う。
彩は俺の彼女なのに。
それでも、不安は消えてくれなかった。
三日目の夜、国際電話がかかってきた。
「もしもし? 彩?」
『あ、やっと出た!』
電話越しの声は、驚くほど明るかった。
『早く会いたい。帰ったらそのままアパート行くからね』
その一言だけで、胸につかえていたものが少し軽くなった。
やっぱり俺の考えすぎだった。
彩が浮気なんてするわけがない。
俺はそう自分に言い聞かせた。
そして帰国当日。
俺は到着ロビーのベンチで、何度もスマホを確認していた。
到着予定時刻は、とっくに過ぎている。
それなのに、彩から連絡は来なかった。
一時間。
二時間。
電話をかけても繋がらない。
胸の奥が嫌な音を立て始める。
事故か。
体調不良か。
それとも――。
不安を振り払おうとした瞬間、スマホが震えた。
画面に表示された名前を見て、俺はすぐに通話ボタンを押した。
「もしもし!? 大丈夫か?」
『……ごめん』
彩は小さな声で言った。
『今日は、疲れちゃったから……そっち行けない』
その声は、どこか遠かった。
空港の騒がしさも、人の話し声も聞こえない。
まるで静かな部屋から電話しているみたいだった。
「彩?」
『また連絡するね』
一方的に通話が切れる。
耳に残ったのは、気のせいかもしれない小さな笑い声だった。
俺はしばらく、暗くなったスマホの画面を見つめたまま動けなかった。
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